北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「かわいいだろ、息子って」
見返しながら畳みかけられるに至って、気づいた。自分が彪吾を見る目線で、父も自分を見ていた。
そうだ、おれも“息子の父親”になったんだった。
肩を並べているような近しさは、新鮮な発見だった。
彪吾の寝顔に目を落とすと、彼はもにょっと動いて小さくあくびをした。
「ひゅうご、って名前だけどさ」
「うん?」
「おれにつけるか最後まで迷った二択のうちのひとつだったって、聞いたことある」
「あー、そうだったかもな」
「それで、次に迎えた子が男の子だったらつけようって、とっておいたけど、引き取る話が進むまえに母さんの病気がわかって、断って」
見返しながら畳みかけられるに至って、気づいた。自分が彪吾を見る目線で、父も自分を見ていた。
そうだ、おれも“息子の父親”になったんだった。
肩を並べているような近しさは、新鮮な発見だった。
彪吾の寝顔に目を落とすと、彼はもにょっと動いて小さくあくびをした。
「ひゅうご、って名前だけどさ」
「うん?」
「おれにつけるか最後まで迷った二択のうちのひとつだったって、聞いたことある」
「あー、そうだったかもな」
「それで、次に迎えた子が男の子だったらつけようって、とっておいたけど、引き取る話が進むまえに母さんの病気がわかって、断って」