北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 累はクーラーボックスから冷えたスポーツドリンクを取ると、一気に半分ほど飲み干した。
 一息ついてから、彪吾に代わって補足する。
「今度は、ちょっと波のあるとこまで泳いで行ってみた」
「そうなんだ! もう慣れたんだね」
「波に乗ると楽しいみたい」
「いいなー。立ち泳ぎできるなんてパパ尊敬する」
 泳ぎが苦手な凛乃が、褒めながら拗ねる。
 最初こそビビりちらしていた彪吾も、波打ち際でしか遊べない凛乃と海に浸かる累の交代を拒むようになり、凛乃はずっとテント番に甘んじていた。
「海に足、浸してくる?」
 彪吾の面倒を見ながらしきりに団扇を動かしている凛乃を促す。
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