北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「ろく」
 口唇を食まれて。
 柔く噛み返した。
 息を交わして。
 ぬくもりを混ぜる。
 受け身役の累が、いつしか顎をあげてむさぼりに行く。
「えっと……じゅう、に?」
 浅い息を整えようとしながら、凛乃が自信なさげに言う。
「まだ9回目」
「うそだ……」
 キスのたびに互いの胸が近づいていくにつれて、ソファに置いた累の手がうずいた。
「これで、はんぶん。じゅうご回」
「手、動かしていい?」
 「だめ」と言いそうな口をふさぐ。いままででいちばん長いキスをすると、肩に置かれた指が食い込んだ。
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