北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「おれの部屋? 凛乃の部屋?」
 調子に乗って口を滑らせたのに、生真面目な問いが返ってきた。
「えっと、それは、やっぱり累さんの、かな」
「わかった」
 累の指が、凛乃のそれをすくいあげる。「楽しみ」
 凛乃はちょっと予感を込めて、となりの累を見上げた。見下ろす累のまなざしも、そこはかとなく熱い気がする。
「にぁあん」
 累がパッと指をゆるめた。それからあわてたように凛乃を見直す顔に、ありありと動揺がにじんでいる。
「つるにこ、呼んでますね」
 凛乃はドアの向こうを見ながら、つるにこの大声に屈しないよう明るい声を出した。
「喉が渇いたのかも。行ってあげてください」
「凛乃も行こう」
 いますぐ飛んでいきたげに、でも凛乃の反応をうかがって足踏みする累を、にこりと促す。
「いえ、わたしそういえばシャワーまだだったんで」
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