北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「ああっ」
 もう声を控えるどころか、自分の声さえ聞こえない。
 どんどん下に向かい脚のあいだにもぐりこんだ累のなすがままに、自分の荒い息にまみれる。
 枕の端をつかみ、脚の爪先までつっぱらせて、凛乃ははじけた。
 胸を上下させる凛乃から身を起こして、累が口唇に軽くキスをした。
 そして大きな溜息をひとつつくと、凛乃の横にあおむけに倒れこんだ。
 無防備な身体は、そのまま動かなかった。
 あんなに騒がしかった部屋が、しんと静まり返った。
 え、累さんは?
 呼吸が整うにつれて冷静さが戻ってきて、凛乃はひやりとした。
 なんで途中でやめちゃったの?
 横目でとなりを見ると、累はまだジャージの短パンをはいていた。最初から脱ぐつもりがなかったのかと思ったけど、ヘソの下あたりはしっかりふくらんでもいる。
 訊いてもいいものか、しばらく迷った。
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