北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 累の口元が、ふっとほころんだ。
 どちらからともなく顔を近づけて、誓いのようなキスをする。
 先のほうをちょっとくっつけあっただけなのに、さっきまでの余韻か、口唇から心臓まで、しびれるような感じがした。
 至近距離からハチミツ色の視線を注がれながら、手を取られた。
「来て」
 いざなわれるままに、累の肩に手を載せる。器用に脱いだ短パンがベッド脇に落ちるあいだに、あぐらの上にまたがった。
 累は凛乃の腰と背中に腕を這わせて身体を引き寄せると、
「痕、つけていい?」
 寄せられ盛り上がった谷のあいだから凛乃を見上げた。
 凛乃がうなずくと、もぐりこむように左右に頭を振って、顔をうずめた。
「んっ」
 きりりとした痛みが甘い疼きに変わって、凛乃は累の頭を両腕で抱えこんだ。
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