北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 心地よいだるさにもぐりこむ夢を見ていた。
 頭のほうだけが沈む感覚があって、凛乃の意識はふわりと浮き上がった。
 まぶたを開くとすぐに、累にやさしく見降ろされていることに気がついた。
「おはよう」
 枕元に腰かけた累が、凛乃の髪を梳きながら言った。
「おはようございます」
 肩を覆っていたタオルケットを、目元まで引き上げる。眩しい。目は開いたけれど、まだちょっとぼんやりしている。
「エアコン、効きすぎ?」
 タオルケットにもぐりこむ凛乃を心配したのか、累が覆いかぶさるように顔を近づける。
「いえ……さっきまで、まだ夜だーと思ってたのに、朝なんですね……」
 「ふ」と、含み笑いが降ってくる。
「夜を使いつくしそうだって言ってた。2回目のあと」
 回数表示がなにを指しているのか思い当ると、目がはっきり開いた。
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