北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「むこうの会社はなんとか続いてるから、国を超えた使いっ走りなのは変わらない」
「そんな言いかた」
すねたような言葉の選びかたに、ちょっと笑ってしまう。
「仕事関係はなくても、こっちの冠婚葬祭とか喚ばれるのはおれだから」
「親戚づきあい、ってことですか」
「父方は全員離れたとこに住んでるのに、フランスよりは近いっておれが。父親が渡仏してからは遊びに行くこともなくて、正直、伯母とかイトコすら昔の顔しか覚えてないのに」
「ああ、それは居たたまれないですよね」
「めったにはないけど」
キャットフードのページに移ったカーソルが、吟味するように上下左右に動き始めた。
未知の身内の登場は、なんだか新鮮だった。
いなくなったひとたちのほうが身近だったから、父親との関わりまで切れるのかと勝手に心配したけど、凛乃がまだ聞いてないことはたくさんあるってことだ。
「そんな言いかた」
すねたような言葉の選びかたに、ちょっと笑ってしまう。
「仕事関係はなくても、こっちの冠婚葬祭とか喚ばれるのはおれだから」
「親戚づきあい、ってことですか」
「父方は全員離れたとこに住んでるのに、フランスよりは近いっておれが。父親が渡仏してからは遊びに行くこともなくて、正直、伯母とかイトコすら昔の顔しか覚えてないのに」
「ああ、それは居たたまれないですよね」
「めったにはないけど」
キャットフードのページに移ったカーソルが、吟味するように上下左右に動き始めた。
未知の身内の登場は、なんだか新鮮だった。
いなくなったひとたちのほうが身近だったから、父親との関わりまで切れるのかと勝手に心配したけど、凛乃がまだ聞いてないことはたくさんあるってことだ。