北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「最近、わたしの休みに毎回つきあってくれてるのは、輸入代行のお仕事がなくなったからなんですね」
「これからも空けあけられるようにする。できるだけ」
「充分です。支社がなくなったのは厳しいことかもしれないけど、累さんに余裕ができるのはいいことです。部屋もすっきりしたし、のびのびできますね」
 うなずいた気配のあと、つぶやきが落ちた。
「でも、不良在庫置き場に部屋を提供してよかった。片づけてくれた凛乃には悪いけど」
「魔境になってよかったってことですか?」
「凛乃がここに来てくれる気になったから」
 コーヒーの薫りをまとった口唇が耳たぶをくすぐる。
「んっ」
 身をよじった凛乃の腰に、タンブラーを置いた累の腕が再び置かれた。
「選んでほしいものがあるんだった」
 検索窓に打ち込まれたコ・ン・ド・ー・ムの文字に目を奪われている間に、ピックアップされた画像がモニターにずらりと並んだ。
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