北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「もうなくなるから、買っておかないと」
 先日、あわただしくドラッグストアで買い求めたそれは、12個入り。
 いつでも封が切れる状態で凛乃のベッドサイドに置いてある。
「どれがいい?」
「特に希望はないですけど……」
 もじもじして返事をごまかす。
「形とか色とか味とか薄さとか、ちがうみたい。アソートにする? いろいろ試せる」
 じっくり検討している様子は、ドラッグストアの衛生用品コーナーで即決したポーカーフェイスとまるで別人だ。
 でも、ふざけたり隠したり軽視したりしない姿勢は重なる。
 あのとき遠くの柱の陰からソワソワと見守っていたように、凛乃は手元のタンブラーをソワソワと回転させた。
「累さんて、こういうこと熱心なタイプだったんですね」
「否定はしないけど……凛乃がイヤなら控える」
 マウスを動かす手が止まった。
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