北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 累が下から引っかけるように指を絡めた。
「身体が思考をねじ伏せることがあるって言うから」
 絡めかえすと、はずみで“どきどきアソート40個入り”がカートに入った。
「凛乃がおれなしではいられない身体になれば、ここにいる理由が増えるかと思って」
「戦略だったんですか」
 つるにことの関わりかたを見て、累は一度うちとけたなら屈託なく愛情表現するタイプなんだと思っていた。
 よく合う視線。浴びせられるキス。そのたびにうれしくて全力で返せば、返すほどに何倍にもなって返ってくる。
 それはそういう訳だったんだ。
「残念でしたー」
 累の手をにぎりこんで、凛乃は言った。
「すでにそういう身体ですからー」
 欲求に素直なつるにこのようにはふるまえないけど、累に触れてほしい気持ちは負けない。
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