北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 腰を抱く累の腕に、力が戻った。
「まだ10回しかしてないのに?」
「……9回です」
 急に色めいた累の声に、控えめに反論する。
「残ってるのは2個だよ」
「いちど、途中で」
 遊んでほしいつるにこにドアの外で大騒ぎされて、もう少しというところで中止したことがある。
「おれ基準で9回だとしたら、凛乃基準だとどれくらい?」
「えっと、まあ、数え切れない、かな」
 マウスから離れた手が凛乃の紅潮した頬をそっと包んで、覗きこむ累のほうを向かせた。
「たしかめていい?」
 凛乃の手からタンブラーが取り上げられた。
「おれももう、そういう身体だから」
 それを証明するように、強く口唇を奪われた。
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