北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 狭いイスの座面で、おたがい身体をかたむけながら密着してゆく。
 累の上腕をなぞる凛乃の昂ぶりに呼応して、累の手が腰から胸にせりあがった。
 やりかたが違うだけで、愛撫は、つるにこの丸い背中を撫でる手や、あごの下をこする指と本質的におなじだ。
 気持ちよくしてやろうと思う気持ちが、自分の気持ちよさに返ってくる。
「はぁ……累さん」
 重なる舌が息継ぎで離れたあいまに、つぶやく。
「好きすぎる……」
「おれも」
 コーヒー味のキスにかまけてななめになった凛乃の身体が、イスから落ちそうになってゆく。
その膝を抱えて、累が目顔でベッドを指した。
「あっち、行こ?」
 凛乃は返事の代わりに累の首に腕をまわした。
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