北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
-今日じゃない-
その着信音に寝入りばなを起こされて、累は渋い顔をした。
あえて無機質な電子音に個別設定したのは陽気な大声に身構えるためだし、真夜中にかけてくるなんて尋常な用件じゃない。
手探りで取ったスマートフォンを、枕との隙間に押し込むように耳に当てる。
めずらしく低くかすれている佐佑の声で、いつにも増して滅裂気味の話を聞くうちに、すっかり目が覚めた。
「すぐ行く」
電話を切るなり、となりで寝ている凛乃の頭をそっと抱え、枕になっていた左腕を抜く。
裸や下着だけで寝入ったら風邪を引きかねない季節なのに、ぬくもりを分け合う落ちるような眠気にまた抗えなかった。
軽く痺れている手で自分が抜けた布団の洞を押さえて埋めると、半眼の凛乃と視線が合った。
「どこ、いくの?」
声が甘えるようにこもる。
あえて無機質な電子音に個別設定したのは陽気な大声に身構えるためだし、真夜中にかけてくるなんて尋常な用件じゃない。
手探りで取ったスマートフォンを、枕との隙間に押し込むように耳に当てる。
めずらしく低くかすれている佐佑の声で、いつにも増して滅裂気味の話を聞くうちに、すっかり目が覚めた。
「すぐ行く」
電話を切るなり、となりで寝ている凛乃の頭をそっと抱え、枕になっていた左腕を抜く。
裸や下着だけで寝入ったら風邪を引きかねない季節なのに、ぬくもりを分け合う落ちるような眠気にまた抗えなかった。
軽く痺れている手で自分が抜けた布団の洞を押さえて埋めると、半眼の凛乃と視線が合った。
「どこ、いくの?」
声が甘えるようにこもる。