北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
文字通り速足で佐佑の家に駆けつけ、産婦人科医院に送り届けたときには、夜の1時半を過ぎていた。
常夜灯だけの待合室のソファで、妙子のついでに応急処置を受けている佐佑を待っていると、処置室のほうから産声が上がった。
思わず背筋を伸ばすと、となりの凛乃が「たぶん、ちがう」とささやいた。
「中に入ったばっかりだよ、早すぎる。それにミョーコさん、破水はしてないと思うって言ってたでしょ。まだ8カ月だから、できるだけおなかのなかにいてもらう方向になると思う」
「そう……」
てきぱき解説した凛乃の横顔を、またソファの背にもたれかかりながら眺める。
それに気づいて、凛乃は横目で苦笑した。
「お姉ちゃん妊娠中に太り過ぎて、お医者さんに叱られるくらいだったの。妊娠高血圧症候群が怖いとか、愚痴とか不安とか発散のためにいろいろ聞かされたから、聞きかじり」
そこへ佐佑が足を引きずるようにして戻ってきた。申し訳なさそうに笑みを作っている。
常夜灯だけの待合室のソファで、妙子のついでに応急処置を受けている佐佑を待っていると、処置室のほうから産声が上がった。
思わず背筋を伸ばすと、となりの凛乃が「たぶん、ちがう」とささやいた。
「中に入ったばっかりだよ、早すぎる。それにミョーコさん、破水はしてないと思うって言ってたでしょ。まだ8カ月だから、できるだけおなかのなかにいてもらう方向になると思う」
「そう……」
てきぱき解説した凛乃の横顔を、またソファの背にもたれかかりながら眺める。
それに気づいて、凛乃は横目で苦笑した。
「お姉ちゃん妊娠中に太り過ぎて、お医者さんに叱られるくらいだったの。妊娠高血圧症候群が怖いとか、愚痴とか不安とか発散のためにいろいろ聞かされたから、聞きかじり」
そこへ佐佑が足を引きずるようにして戻ってきた。申し訳なさそうに笑みを作っている。