北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「頼む。なんならしばらく好きに使って。悪いね、維盛さんにまで面倒かけちゃって」
片手で拝まれて、凛乃が首を左右に振った。
「なにかあったら、また声かけてくださいね」
「ありがとう……ふたりのときは、ぜったい恩返しするからね」
先走った挙句、自分の言葉に感動して泣き出しそうな佐佑を置いて、累は立ち上がった。
「お大事に」
累に合わせて腰を浮かせた凛乃が、笑いを噛み殺しながら言った。
まばらな街灯に照らされた深夜の道を、車がゆっくり走りだす。
大通りに出ても、走行する車は少なかった。さわがしいポップスを歌い上げるラジオのボリュームを落とすと、濃い夜の色は信号の点滅する音まで聞こえそうに、しんとしていた。
「ふたりとも大事にはならなさそうで、よかった」
凛乃がペットボトルのお茶をこくりと飲む。そんなものを持参していたことに、いまやっと気づいた。
片手で拝まれて、凛乃が首を左右に振った。
「なにかあったら、また声かけてくださいね」
「ありがとう……ふたりのときは、ぜったい恩返しするからね」
先走った挙句、自分の言葉に感動して泣き出しそうな佐佑を置いて、累は立ち上がった。
「お大事に」
累に合わせて腰を浮かせた凛乃が、笑いを噛み殺しながら言った。
まばらな街灯に照らされた深夜の道を、車がゆっくり走りだす。
大通りに出ても、走行する車は少なかった。さわがしいポップスを歌い上げるラジオのボリュームを落とすと、濃い夜の色は信号の点滅する音まで聞こえそうに、しんとしていた。
「ふたりとも大事にはならなさそうで、よかった」
凛乃がペットボトルのお茶をこくりと飲む。そんなものを持参していたことに、いまやっと気づいた。