北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「よそものじゃないでしょ」
累は手を伸ばして、凛乃の口唇をつまむようにそっと指の背を押し当てた。
「おれが着てほしいって思ったひとだからいい、って言うと思うよ」
口元は隠れたまま、凛乃の目が丸く細められる。両手で累の指を持って、キスするように口唇をつけた。
「累さん」
「ん?」
「ありがとう」
「うん」
視界の端で、横断歩道用の信号が点滅しているのをとらえ、累は前方に目と手を戻した。
「まずサイズ確認しないとね。なにがあるのかないのかちゃんと調べて、足りないものは借りる? なんなら半襟とか新しく買っちゃう? 地の色はピーコックグリーンだから……」
スマートフォンを繰りながらあれこれつぶやく凛乃の声が、もうはずんでいる。
累は手を伸ばして、凛乃の口唇をつまむようにそっと指の背を押し当てた。
「おれが着てほしいって思ったひとだからいい、って言うと思うよ」
口元は隠れたまま、凛乃の目が丸く細められる。両手で累の指を持って、キスするように口唇をつけた。
「累さん」
「ん?」
「ありがとう」
「うん」
視界の端で、横断歩道用の信号が点滅しているのをとらえ、累は前方に目と手を戻した。
「まずサイズ確認しないとね。なにがあるのかないのかちゃんと調べて、足りないものは借りる? なんなら半襟とか新しく買っちゃう? 地の色はピーコックグリーンだから……」
スマートフォンを繰りながらあれこれつぶやく凛乃の声が、もうはずんでいる。