独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
「!」

顔を上げた須和に熱い眼差しを向けられ、葵の鼓動は大きく跳ねる。

「葵ちゃん、大変だったね。いつから? この状況になったのは」

「……あ、えっと……須和さんと最後に会う少し前に、お父さんの病気が分かってそれで……」

「……」

須和は小さく息を吐き、傷ついたように笑う。

「……僕はなんにも知らずに、君を一人にしてしまったんだな。守ってあげられなくてごめん」

「……っ」

その言葉に葵が打ちひしがれていると、須和はまっすぐ葵の瞳を見つめた。

「中途半端な態度で君を傷つけて、僕にはもう君に会う資格がないのは分かってる。
……けど、やっぱり葵ちゃんに会いたくて今日ここにやって来た」

「須和さん……」

「この半年、ずっと君のことが頭から離れなくて、ようやく自分が恋してるんだと気づいたよ。
僕は君に嫌われることが怖くて、逃げてただけだったんだ。
……ずっと君のことが好きだったのに」

「……っ」

(私のことが好き……? 須和さんが?)

『君の前では優しい自分でいられる。けど、本来の僕は全く違う』

初めてキスされたときに言われたセリフが、葵の脳裏に蘇る。

確かに、須和のことを葵はほとんど知らないかもしれない。
お店にいるときのわずかな時間だけなんだから……でも。

「私は……どんな須和さんを見たとしても嫌いになったりはしないですよ」

「え……?」

須和は驚いた表情で、葵の瞳を見つめる。

「私が知らない須和さんは、酷い人なのかもしれません。
けど、私にくれた時間は全部優しくて、温かったです」

この二年間、何度須和に助けられただろう。私も、家族もーー。

「……」

「あなたがどんな人でも、私にくれた時間は絶対ですから……」

「……葵ちゃん」
< 100 / 209 >

この作品をシェア

pagetop