独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
葵はぼんやりとした頭で、そのまま実家に帰ってきた。
今日は冬というのに日差しが強く、玄関の窓ガラスから差し込んだ光が葵の影を強く映し出した。

(あ……柾さんのピン……)

今更思い出して、葵は小さく息を吐く。

(なんでなの……)

「お父さん、ひどいよ。いつもいつも私に何も言ってくれない……」

怒りと一緒に涙が溢れてくる。

私が子供だから? 頼りないから?

何回この言葉を利光に繰り返しただろう。

これでもこの二年間、利光に認めてもらおうとむしゃらに走ってきたつもりだった。
もう少し認めてくれても。頼ってくれてもいいじゃないか。

(もう本当に、私には何も残っていないんだ)

沢山の思い出も、頑張ったことも、あの更地を見てすべて真っ白に塗られてしまったように感じる。

(あの十二月の閉店日に全部終わってたことは分かってたけど……)

でも心のどこかで、まだ天馬堂の存在があった。
また近い将来に復活するのではないかという、甘い期待もあった。

「これが現実なんだ」

葵は涙を拭いながら、ボストンバックをギュッと抱きしめたのだったーー。
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