独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
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「退院おめでとうございます」

「本当に皆さん、ありがとう!」

ミニブーケを手に持った利光が、手術にあたってくれた医師の立、そして看護師数名と挨拶を交わしている。葵はその光景を微笑みながら眺めていた。

「葵ちゃん、この前のことは本当に申し訳なかったよ」

立がこっそり耳打ちをしてきたので、葵は小さく会釈をする。

「いえ……私よりも柾さんの方が……」

「この前さ、柾が病院に来てた時にもう一度ちゃんと謝ったよ。
あはは、あいつって怒ると本気でやばいからさ。また殴られそうになって……」

「え……?」

初耳だ。彼から一言も病院へ行ったなどとは聞いていない。

「お父さんのお見舞いか何かできてたのかな……」

まず、それ以外考えられない。

「まま、本当にもうしないからこれからも仲良くして欲しいな!
こんなに女の子にハマってる柾を見たことがないから、君たちいずれ結婚するでしょ」

“結婚”というワードに過剰反応して、葵の頬が薄く染まる。
照れながらも「それは分かりません」と付け足しておいた。

「じゃあ、お父さんも、葵ちゃんも元気で!」

立の爽やかな笑顔に見送られて、葵と利光は微笑みながら病室から出ていった。
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