独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む


『いつもいつも他人のことばっかり考えるんじゃなくて、いい加減自分の人生を生きてくれ』


利光の言葉が頭にこだまする。


母が倒れたから店を手伝って、母が喜ぶから和菓子を作り始めて。

母が 広めたい と言ったから、頑張ろうと思って。

自分が継がないとお店が終わるから、がむしゃらに走って。

(ああ、確かに自分の人生は……)

と思う。

でもそれだけだったっけ? 
私は和菓子作りが好きだし、褒めてもらえると嬉しい。
柾さんと対等になれるような女性になりたくて、和菓子職人として成功したい。
そんな浅はかな考えを持ったこともあるーー。

全て紛れもない事実だ。


(そして何より、私は『天馬堂』が好きだった。だからなくなるのが悲しかった)

利光の『天馬堂』は終わった。
葵が継ぐこともなく。もう跡形もない。
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