独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

見るからに驚いた表情の柾の後ろに、小柄で派手な顔立ちの女性が一人。
葵の姿を目視するなり、その女性は肩にかかっていた茶色いボブを指でくるくると巻き付ける。

彼女の不機嫌な顔に葵が目を奪われていると、柾はすぐさま彼女の隣に腰かけた。

「もしかして資料を持って来てくれたのか。お腹が大きくて大変だっただろう」
「運動不足をお医者様に指摘されて、少しお散歩したくてね。柾さんのお顔も見たかったし、ちょっと我儘言って来ちゃった」

頬を赤らめ正直に伝える彼女に、柾の目元が緩む。
愛おし気に彼女の頬を撫でながら、彼は目の前の大きな瞳を見つめた。

「無理していないならいいよ。俺も葵に会いたかったし」

柾は後ろに女性が立っていることも忘れて、葵に甘い言葉を投げかける。
照れ臭くなって彼女が黙り込むと、ヒールをおもむろにガツンと踏みつける音が聞こえてきた。

「社長、私はこれで失礼します」
「ああ、三坂さん。じゃ」

柾は「まだいたんだ」と言いたげな声で三坂に応えた後、すぐに葵を見る。
視界に映った彼女の鬼の形相に、葵の心臓が縮こまった。

「安心した、柾さんがびしっと言ってくれていて」


静かになった社長室に、葵の安堵のため息が響く。
呆気にとられた柾は、すぐに彼女の顔を真剣に見つめた。

「どういうこと?」

「柾さん最近帰りが遅いし、昨日、女性から個人的なメッセージが来てるのを偶然見ちゃって。正直家でジッとしていられなかったというのが本音なの」
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