独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
須和は一瞬目を見開き、葵の瞳を見つめる。
さきほど自分の話をレストランで聞いてくれた時の……何か考えを巡らせている時の表情だ。

(もしかしたら特別な事情があるのかもしれない)

「もし……話すのが躊躇われる内容なら、無理には聞きません」

葵が微笑むと、須和も小さく笑みを返した。

「……いや、いつか葵ちゃんに話さなくちゃと思ってたんだ。僕と君の家族のこと」

「須和さん……」

「前も話したことがあったけど、
君が産まれる少し前まで僕はおじさんと由紀子さんに本当によくしてもらっていた。
この家の子供になりたいと、幼いながらに何度も思ったことがあったよ」

「この家の子供になりたい……って、須和さんが……」

「うん」

須和は懐かしむように、天馬家と自分の間に起きた出来事を葵に伝えていく。

「僕はこの家の一人息子で、昔から厳しい教育のもと育ってね。
学校以外の時間は全て習い事や勉強をしていて、友達もロクにいなかった。
家に帰っても、両親の夫婦仲が冷え切っていて全く気持ちが休まらなかったよ」

「そうだったんですね……」

初めて聞く須和の生い立ちに胸が苦しくなってくる。
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