独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
(そんなことがあったなんて……)

葵が産まれる前のことだ、知る由もない。

「泣いてる僕を、由紀子さんは抱きしめてくれた。おじさんも何か思ったことがあったのか、うちの父と連絡をとって、少しの間天馬堂で過ごすことになったんだ」

親の愛情を知らない子供にとって、二人の優しさにどれだけ助けられたのだろうか。
葵は黙って須和の話を聞いていた。

「一週間もなかったと思うけど、お店を手伝わせてくれたり、一緒に遊んでくれたり、本当に楽しかったよ。家に戻ってからも時々勉強を抜け出して、二人に会いに行ったりした。
……けれど、突然、父親の命令で海外の学校に編入することになってね」

「えっ……」

話が急展開だ。幼い須和の気持ちを完全に無視した、父親の行動に疑問を感じる。

「父に大学を卒業するまでは、ほとんど日本に戻ることを許されていなかった。
おじさんたちと再会したのは、つい数年前だよ」
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