独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
「ああ、そうだったのか! お前たちは意外に一度も顔を合わせたことがなかったからな。
葵、自己紹介は済んだのか?」

「う、ううん、まだ……」

(お父さんテンション高いなぁ、二人は一体どんな関係なんだろう……?)

珍しく陽気な父の姿を見て、葵はしどろもどろになってしまう。

すると、スッと目の前に大きな手が差し出された。

「改めまして、須和です。よろしくね。
おじさんの同級生が僕の父で、昔から顔見知りなんだ。
しばらく海外で生活してたから、一時は疎遠になっていたんだけど、
職場がすぐそこになってから、また交流が始まって」

「そうだったんですね、全然知らなかった……」

差し出された手を握ると、一瞬力強く握り返されて心臓が跳ねる。
視線を上げると、彼は葵の瞳を真っ直ぐ見つめていた。

「私は、葵です。高校三年生で今は冬休みでお店を手伝ってるんです」

「へー三年生か、お手伝いしてるってことは進路は決まってるんだ」

「えっ、あ……そうですね……」

天馬家の間で最もタブーな話題に触れられ、葵はそれ以上言葉を繋ぐことはできなかった。
横目で父の様子を確認すると、案の定、口をつぐんで難しい顔をしている。

(うわ、どうしよう)
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