傷つき屋
マコトの回想2
きっかけは、年の離れた弟でした。
家に帰るやいなやリビングのこたつに突っ伏して泣く弟と、その様子を見てうなだれる母がそこにいました。
「もう、ずっとこの調子。なんとか言ってやってよ」
何があった?と聞いても答えません。
母が気を使うように耳打ちします。
「ダイジなんか今日サッカークラブの練習だったんだけど、レギュラー外されたみたいなの。たかがそのくらいで、大げさよね」。
それから僕らは一緒に風呂に入り、体を寄せ合って湯船に浸かりました。
まだしくしくと泣き続ける小学生の弟を見て、そんな風にスポーツに打ち込む弟の成長を嬉しく思いました。
父親のいない家庭。長男の僕がしっかり声をかけないと。そう小さな肩を抱いた、瞬間。
……弟の薄い胸に、火の玉のような毒々しい明かりを感じました。