傷つき屋
「……ヤったら教えろよ」
コロッケパンの形が歪むくらいきゅうきゅうに包まれたサランラップを爪で引っ掻いて剥がす。
何重にも重なってややこしいそれが、いつまで経っても本質に触れさせない。
もどかしくなって強めに爪を立てた。
教室のドアがガラっと開く。
「お、噂をすれば」
にっこり微笑むマコトを横目に、岬が口をむっと結ってドアの横に立っていた。
やべ、聞かれたかな、と思わず目を逸らす。
「来週な、岬と病院デートするんだ。アキオも来いよ」
「病院デート?」
岬はふくれたように、「もう、言わないでって言ったのに」とこぼして俺たちの前を横切り、そのまま図書室に入っていった。
手にはいつも読んでいる、茶色いカバーのついた分厚い本を持っていた。
その背中をマコトは走って追って行こうとした。