傷つき屋

病院の自動ドアが俺たちを迎え入れる。
入り口は暗く、誰もいない。

ところどころ擦り切れたぼろぼろのスリッパを3つ、岬が並べてくれた。

「アルコール消毒だけしてくださいね?」

無愛想な看護師が通りすがりにぶっきらぼうに言う。

日曜の朝だというのに俺たちはなぜか申し合わせたように制服で来ていた。
学びの一環として、せめてもの礼儀というつもりだった。





エレベーターで最上階の4階に向かう。

どの部屋の前も、公園のトイレのような独特の匂いがした。

誰かを探すふりをして部屋を覗きこみ、様子を見て回る。

目を開けたまま眠るように、一見性別も分からない人がベッドに横たわっていた。

やせ細った白い肌に茶色の斑点が浮かんでいる。
隙間だらけの白髪頭が一つ、また一つ。


「誰が誰かとか区別つくのかな、看護師って」

だとしたらプロだよな、とマコトは斜め上の感心の仕方をしていた。

岬は一部屋一部屋をじっくり観察するように、4階から3階、3階から2階へと時間をかけて歩いていた。


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