傷つき屋
「心が苦しいのはまだマシなんだよ、生きている証拠なんだよ。一番だめなのは心が何も感じなくなることなんだよ」
かたくなな岬を瞳の真ん中に捉える。
何で必死になっているのか俺には分からない。
「心が何も感じなくなったら、早急に死んだほうがいいんだよ」
興奮したように高い声で早口になる。
マコトは何か言いたげに一点を見つめていた。
まあまあ、とお決まりの言葉を俺は発した。
「二人とも考えすぎだよ」
そう笑って、レモンジュースを流し込んだ。
喉を潤すそれは冷たくて酸っぱい。
「死に方より、生き方を考えたほうがいいだろ。俺らはまだ10代なんだから」
マコトがやっと笑う。「お前らしいな」と言って、力を抜くように首を回す。
腑に落ちてないのは岬だった。
喉まで出て来た言葉を胸に押し返すように、思い切りジュースを飲んでいた。
今、俺と同じくらい酸っぱいのだろうか。
マコトがエスパーで人を救うと言ったみたいに、岬も安楽死で人を救いたいと思っただけのはずなんだ。
二人の、救いたいと思う気持ちは共通しているんだ。
俺はそう必死に言い聞かせて、自分を納得させた。
どうしてか、マコトと岬の意見が食い違っていることを認めたくなかった。