傷つき屋
崩れていくマコトの心
授業の終わるチャイムが鳴り、うちわのように下敷きで仰ぎながら、俺は振り返った。

一つ後ろの席にはマコトのつむじがある。

「最近あちーな。なあ?」

いつものようにノートを写させてもらおうと、マコトが突っ伏している下に敷いていたそれを、引っ張って抜き取る。

しかし大きく開かれているノートに、四角い空白が飛び込んできた。何も書かれていない。


マコトが重たげに頭を持ち上げ、はあ、と息をついて目を閉じたまま肘をつく。


そういえばマコトは最近授業中もずっと寝ている。

真っ白なノートをぱらぱら、とめくり何も言わない俺に向かって、最近夜眠れないんだ、と片目を閉じたまま言い訳をこぼした。

俺は違和感を覚えたけれど空元気で笑って見せた。

「寝ずに何してんだよ、オナニーか?」

マコトは笑わない。
焦点の合ってない瞳で、肘をついたまま瞼がまた下がっていく。

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