傷つき屋
賑やかな教室に三角の沈黙が浮かぶ。
「アキオくん、ちょっと」
岬に小さく手招きされ、俺は立ち上がって岬について教室を出た。
「心配なの、最近疲れてるみたいで」
岬は廊下の掲示板を背もたれにして、伏し目がちにこぼした。
岬と二人という慣れない状況でどうしていいか分からず、首をひねったり、シャツの首を掴んでばたばたと空気を入れたりした。
そうしてもさらにじわっと汗が追って出る。
「ラインも前みたいに返ってこないし、何かあったのかな。尋ねても、寝不足としか言わないし。でも本当調子悪そうで……見てる私まで、しんどくなる」
窓の外の強い日差しが岬の肩にかかり、白いシャツからキャミソールの細い肩ひもが透けている。
いつもより一つ多く空いた胸元のボタンの隙間から、紺のレースが覗くのを見て、俺みたいなやつは死んだ方がいいな、と思う。
上手く言葉の出てこない俺に「何か聞いたらこっそり教えてね」と言って岬はスカートを翻した。
今日もいつもの本を持って、廊下の先まで歩いて行く。
俺は額の汗を手のひらでぬぐうようにして、がしゃがしゃと髪を乱す。