傷つき屋
再び教室に入り、端っこを通って自分の席まで戻る。
突っ伏したままのマコトのつむじを、押し黙ったまま見下ろす。
缶ジュースが俺と同じくらい汗をかいている。
すとんと席に座り、考えた。
マコトは人助けのつもりかもしれないけど、他人の代わりに傷つくなんて、やっぱりありえないだろ。
というか、ありえても、やっぱりそれって損じゃないのか。
だってマコトは昔から頭も良くて、スポーツもできて、みんなからも一目置かれる存在で、イジメられっ子とかヤンキ―とか、そういうのとは無縁なんだから。
そういう奴が進んで嫌な思いするのって……絶対損だろ。
心の中がもやもやとして次第に渦を巻く。
いや、そうだよ。マコトは全て持っていて、恵まれていて、俺なんかが敵うはずなくて。
中学も高校も、なぜかこうして一緒にいてくれているけど。
そう、一緒にいるんじゃない、いてくれているんだ。
そもそもなんで冴えない俺と一緒にいるんだろう。
俺には分からなかった。
いつもそうだ、俺なんかには到底分からない。マコトの考えていることが。普段は
奥に引っ込んでいる劣等感が徐々に姿を表す。