傷つき屋

「もう死んだらいいのに」。生活を共にする家族にそう思ってしまうのは罪なことでしょうか。

おむつが汚れて不快だから声が出るとか、体の位置が痛いから目覚めるとか、祖父にはもうそういうシナプスは繋がっていません。

怒りとか、悲しみとか、そんな感情はもう無いのです。



心が何も感じなくなった人間は壊れている。
壊れた人間が早死にするために、安楽死は有効な手段です。
ここでいう安楽死は、尊厳死の意味合いとは少し違う、言葉通りの「安楽死」です。



私は安楽死の本を読み漁りました。
安楽死が合法化されれば、祖父がいなくなれば、私たちは元の幸せな家族に戻れる。
私の世界は平和になるんです。


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