傷つき屋
マコトを救いたいアキオ
もうすぐ夏休みだというのにマコトは急激に遅刻が増えた。
1限目には決まって間に合わない。2限目の途中くらいに来ても、昼までずっと席で寝ている。

「昼、食わねーの?」

あまりに眠り続けるので尋ねてみたけれど、微動だにしない。
岬もマコトのことを気にしているみたいだ。さっきからやたらと目が合う。



教室には相変わらずビビットな色のペンキみたいな女子達の声が飛び交っている。

「マジうけんだけどあれホントキモイから、あの国語教師まじ目がラリってるし体臭やばいしロリコン確定だから!」

「うるせえな」

マコトが太い声を放つ。
隣の席の女子のグループの動きがぴたっと止まる。

「寝れねえだろうが」

色の無い目で睨み付けながら吐き捨てるように言う。
沈黙の後に、え、まじ、なんなの、と口々にこぼしながら気まずそうに女子達が教室を出て行った。


マコトは頭を抱え込む。
うるせーよ、頭いてーよ、と一人で呟く。

こんな曲がった奴じゃなかった、俺は戸惑いつつも散らかった頭の中で言葉を探す。

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