傷つき屋
「マコト」
まだあれやってんだろ、と言おうとして飲みこむ。
鋭い目線に捕らわれて怖気づく。
なんだよ、と喧嘩をふっかけてくるみたいな声色が飛んで来る。
「人の『傷』を請け負ったって……以前は、体は何ともないって言ってただろ」
真っ黒な瞳の真ん中に俺が映る。
マコトは視線を逸らさずに何も言わない。
「とにかくもうやるな。あの仕事は」
マコトは何も言わない。
かさかさに乾燥した唇はところどころ皮が剥けている。
そのまま再び突っ伏して、昼飯を食べることなくまた眠った。
岬は不安そうな顔のままで立ち上がり、何かを吹っ切るように教室を飛び出した。