傷つき屋
放課後、マコトは足早に快速電車に乗り込んだ。俺も走ってそれに続く。
「ついてくんなよ」
俺は両ひざに手のひらをついて、息切れしながら聴こえないふりをした。
マコトは不満げに口を一文字に結んだけれど、そのまま席に座ってすぐに腕を組んでうつむき眠った。
いつもの河川敷に着いた。
けれど、いつもと違って誰もいない。
傷つき屋への依頼も時には冷やかしがあるのかな、などと考えつつマコトの隣に座っていた。
マコトは押し黙ったまましばらくその場にいたけれど、急に思い立ったように河川敷を歩き始めた。
川の流れに逆らうように、上流の方向へと進んだ。
もう無茶をしてほしくなかった。
マコトが頑なに信じる世界平和は、マコトの心を犠牲にして成り立つものではないのだと、そういうことが伝えたいのに上手く言葉にできない自分に嫌気がさした。
砂利を踏みしめる音が、俺たちの距離を埋める。