傷つき屋
それが目に飛び込んできた時、俺はぞっとした。
何本目かの橋の下で、人が倒れていた。学生服の少年だった。
マコトが突然走り出す。俺も砂利に足を取られながら追う。
口角に血を滲ませて、目の上が青黒くなった少年が、腹を押さえながら肩で荒い息をしている。
傷ついた少年に何も問わず、マコトは抱きかかえるように背中に触れて目を閉じた。
俺は息を止めた。教室のレモンジュースの缶の、冷やりと濡れた感覚が蘇った。
しばらく経った頃だろうか、少しだけ体を離し、マコトは口を開く。
「誰にやられたの」
少年は答えない。
「まだ痛い?」
少年は倒れたまま咳き込む。荒い呼吸はおさまらない。
「痛いです……」
暴力だろう。誰がこんな酷いことを。