傷つき屋
「……どこが痛い?」
マコトは眉間に皺を寄せながら、弱々しい声を出した。
少年の目から涙が流れる。
「……お腹と、背中と、首」
俺は目を凝らした。地面に膝立ちしたマコトの肩が上下する。
体を揺らすみたいにして声を上げて泣き出し、その声が響き渡る。
体の傷は代わってやれない。それが世界平和を望むマコトの絶望だった。
俺は拳を握りしめる。
当事者になれない人間のやるせなさが、俺の全身を覆い尽くす。
マコト、それ誰の涙だよ。
口には出せなかった。人を救えない虚しさが、砂利の隙間に散らばっている。
理不尽が生み出した痛みが横たわっている。それを前にして俺たちは何もできなかった。