傷つき屋
「とりあえずあいつ今日も遅刻してくるだろうから、来たらすぐ話聞くわ」
落ち着かない岬をどうにかなだめて、先上がってな、と促す。
力なく階段を登る小さな背中を見ながら、俺は昨日のマコトの背中を重ねていた。
肩を落として丸くなった、あの背中。突然の不安が思い立ったように全身を襲う。
すぐにスマホを取り出し、「起きたら電話して」とマコトにラインを送る。
ところがその日は昼になってもマコトは来なかった。
ラインは既読になったが返信は無い。
とりあえず岬にそのことだけでも報告を、とも考えたけれど、岬の席まで一人歩いて声をかけるなんてことは俺にとっては至難だった。