傷つき屋

「ねえ、えっと、何だっけ名前」

スマホから顔を上げると、ばさばさの上向きの睫毛を躍らせながら、派手な女子が話しかけてきた。
カールした茶髪は毛先だけが白く染まっている。

たしか、時々マコトと話していた、加藤とかいう奴だ。
突然声をかけられたことに戸惑って背中がむずむずとする。

「まじで何だっけ名前、あんた」

あまりに早口で聞き取れず、え?と尋ね返すと、加藤は呆れたように眉間に皺を寄せて、まあいいや、と息を吐いた。

「マコトなんで休んでんの?」

え、いや、分かんね、と口をもごもごさせる。
加藤は、ふーん、とだけ返すと、くるっと回転椅子みたいに逆の方向を向いて、てかさーと別の女子と話し始めた。


俺はスマホをポケットに入れて、黒板の隅に書いた小さな文字を目で読んだ。来週から期末テストが始まる。


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