傷つき屋

夜になっても返信が来ないことに胸がざわついて、俺は夕飯を食べた後すぐ鞄を手に取った。

「えー、どこ行くの。お風呂入っちゃってよ」

じゃないとお湯が抜けないじゃん、と母親が不満そうにこぼす。

「夏はシャワーでいいって言ってるだろ」

つい憎まれ口を叩いてしまう。


2つ年下の妹が雑誌を見ながら夕飯を食べるのを、お行儀悪いわね!食べてから読みなさいよ!と強制的に母親が閉じる。

表紙には舌を出して笑う鈴元美咲がいて、その薄っぺらい虚像に少しの間目が留まる。



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