傷つき屋
俺は自転車にまたがり、半袖のTシャツを膨らませながらマコトの家へと飛ばした。
すぐに到着したけれど、マコトの自転車はいつもの場所に停められていなかった。
俺は河川敷へと方向を変えて、再びペダルを漕ぎスピードを上げる。
風を切って突き進むと、右手の橋の上にマコトの姿を捉えた。
キキ―ッと急ブレーキの錆びた音が大げさに響いて、振り返ったマコトと目が合った。
自転車を降り、橋の入り口に停める。
マコトは何も言葉を発さずに、俺が近づいてくるのをただ見つめていた。
「……返信返せって」
マコトの生気のない顔が、橋を通り過ぎる車のヘッドライトに照らされる。
光の宿らない二つの目が、俺を責めるようにこっちを向いている。
もっと急がないといけなかった。俺は心臓から血液が逆流するみたいに首の横がどくどくと波打つのを感じた。
マコトの目がこんな風になってしまった。
濁ったまなざしに捕らわれて、俺は唾を飲みこんだ。