傷つき屋


「刺された少年は意識不明の重体となっています。署は殺人未遂の疑いで近隣に住む男子高校生を逮捕、事情を聴いています……」

俺はがたっと立ち上がった。

そのはずみで椅子が後ろに倒れ、けたたましい音が響く。

きゃあっと母が声を上げた。



「マコト……」


がたがたと脚の震えが止まらない。


皿をはみ出て、つぶれた黄身が机にこぼれ出ていた。

手の先と背中が冷たくなっていく。


マコトだ。つるぎのような直感が脳天へ突き刺さった。マコトが人を刺した。


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