傷つき屋

高校になってもアキオと一緒でした。

「マコトならもっといい高校行けただろうにな」

アキオと言われましたが、僕は自分が父親代わりとして、この頃夜勤の増えてきた母親の代わりにある程度家事をしてやりたいという理由から今の高校にしました。

サッカー部も同じ理由で辞めました。
けれど心のどこかで、サッカーに飽きていたという理由もありました。

僕は何でも最初の段階で人より少し上手くできてしまって、何かに打ち込むことができなかったのです。
後に知る、レギュラーから落ちて泣きじゃくっていたあの時の弟のように。





「俺、やめとくわ」

体験入部と書かれた更紙のプリントをぺらぺらとさせながら、言いました。

白黒で画質の荒い印刷のせいで、映っている部員の写真の顔が、ほとんど黒く塗りつぶされていました。

「まじか」

アキオは一瞬驚いて、でも特に気にも留めない様子になって「じゃあ俺もやめとこ」とプリントを丸めて捨てました。


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