傷つき屋
マコトの回想
「マコト」

トン、トンと心地よく胸を叩く大きな手のひら。

「将来の夢は何だ?」

トン、トン、トン。お父さんは掛け布団の上に寝そべっていて、僕だけぬくぬくとあたたかい。


どうぶつえんのひと、と言うと、お父さんは笑いました。
飼育員な、と笑いました。


「お父さんはどうして、警察官になったの?」


時々だけど、お父さんが夜家にいると嬉しかったです。

お母さんが、二人で寝ておいで、って寝室に押し込むから、僕たちはこうやっていつもこしょこしょ話をしました。


「そりゃあ世界平和だよ」


せかいへいわ、って漢字はまだ習っていませんでした。


「この世界が平和になるように、お父さんは警察になったんだ」


お父さんは、お母さんみたいに「早く寝なさい」って言わない。

トン、トンって僕の胸を優しく叩きながら、ずっと話してくれるんです。


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