傷つき屋
事件当日のことはよく覚えていません。
ただ、その姿を見つけた瞬間、こいつを殺したい、と思いました。
呼び出されて殴られて鼻血が出た、唇をカッターで切られた、ライターで制服の裾を炙られた。
あの時の心の痛みと、そいつの笑い声と、惨めで辛くて死にたかった記憶が一気に記憶が蘇りました。
僕自身がそうされたわけじゃないのに。
こいつを殺したい
こいつを殺したい
……ごめんなさい、本当にそれしか覚えていません。
彼の名前?いえ……分かりません。
最近は、覚えてないことや、分からないことばかりです。
僕は、心が壊れてしまったのでしょうか。
親友?
アキオの話ですか?
もうアキオの話はしません。さっきので全て、です。
犯罪者に親友だと言われても、アキオの迷惑になりますから。
あいつには……本当にごめんと、そう伝えてください。