傷つき屋
「えっとまず、君の名前を教えてくれる?」
「オオバ アキオ です」
「アキオくん、マコトくんと長いお付き合いなのかな?」
「小学校から一緒です」
「そっかそっか。よく遊んだりしてた?」
「遊んで……というか、家が近くて。中学はサッカー部一緒だったり」
うんうん、と口の前で手の平を組んで肘をつき、うさんくさい笑顔で大げさに頷く。
「部活引退してからはゲーセンとか行ってましたけど」
「そっかあ。仲が良かったんだねえ。最近は?」
河川敷や病院での光景が思い浮かんだけれど、口をつぐんだ。
仲が良かった、と唐突に過去形にしてくるこの警官が、俺の言葉の一つ一つをふるいにかけているようで怖かった。
「最近は……。高校に入って部活、入らなかったので」
「どうして入らなかったの?」
「マコトが入らないっていうから。僕も入りませんでした」
「どうしてマコトくんはサッカー部に入らなかったのかな?」
「さあ……」
「そうかあ。学校とかではよく話してた?」
「そうですね、まあ、普通に……」
「マコトくんは君以外に、仲良いお友達とかいたかな?」
岬が思い浮かんだ。けど俺は首を曲げて、答えなかった。
「ご家族とも、付き合いがあったりしたかな?」
「マコトの家族、ですか?」
首振り人形みたいに頷くと、頭頂部が薄いのがちらついて見えた。
「看護師の母ちゃんと……弟がいたような。俺が見た時は、幼稚園児とかでしたけど」
なるほどねえ、と指を舐め、無造作に置かれた紙をぱらぱらとめくる。眼鏡を上げて亀のように首を前に出し、念入りにその紙を確認しながら、唸る。