傷つき屋
「でさ、今回のことなんだけどさ」
ぎく、と体に力が入る。
「最後にマコトくんとあったのは、いつ?」
「……事件の前日です」
「どこで会った?」
「隣町の橋の上で」
「一緒に行ったの?」
「いえ、僕があいつを探してて、そこで見つけました」
「そう。アキオくんはどうしてマコトくんを探していたの?」
「いや、なんで学校休んだのか気になったんで」
「心配してたってことだね」
「まあ、はい」
「何か話したかな」
「……。」
「特に何も話していない?」
「あんまり覚えてないです」
丁寧に時間をかけて正解を探しながら、答えた。嘘を言うつもりはない、けれどマコトや岬に悪い影響を与える言い方はしたくない。
「君は、今回被害に遭った少年を知ってる?」
「知らないです」
「マコトくんと、今回刺されてしまった被害生徒さんは、面識があったのかな」
「ないです」
「ない?」
「ないと思います」
警官の小さい目にぐっと力が入る。舌が喉に貼り付きそうになるのを感じた。
何か言わないと。疑われて、いる。
「その被害生徒ってやつが、普段いじめをしていて、そのいじめられている人が苦しんでいて、マコトはそのいじめられていた人の代わりにそいつを刺したんです」
マコトは悪くない。
毅然とそれを伝えたいのに、焦って呂律が回らない。
「じゃあマコトくんは、そのいじめられていた子と、友達だったってこと?」
「……そうではないですけど」
「じゃあ、なんで?」
俺は黙った。「なんで」。心の中で繰り返した。
「なんで、知らない人の代わりに刺すの?」
小さな二つの目が痩せっぽちの俺を捕らえていた。動揺して、胸に大きく息を吸い込む。
「関係ないのに?」
たたみかけてくる。喉が細くなって息が出てこない。