エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
私はあなたが好きじゃない
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残暑厳しい九月の平日、午前十一時。
みなとみらいにあるホテルのラウンジには、爽やかなピアノのメロディーが響いている。
横浜港を一望できる明るい店内はそれほど混みあってはおらず、外の喧騒を忘れるほどのゆったりとした優雅な時間が流れていた。
けれど、そんな雰囲気とは正反対に私―沢木千菜の心はざわついている。さっきから腕時計をちらちらと確認しては、なかなか現れない待ち人を待ち続けること三十分。
どうしてあの男は来ないんだ!
日付も時間も場所もすべて指定してきたのは向こうだというのに遅刻なんてありえない。
次第に怒りが湧いてくる。落ち着くためにコーヒーを飲もうとカップに口をつけたものの空っぽ。新しく注文したくてもこのラウンジのメニューはすべてにおいて高級価格だ。一杯千円以上もするコーヒーを二杯も頼めるほど、私の財布に余裕はない。
近くのテーブルで談笑しているマダムたちがつまんでいる豪華なアフタヌーンティーセットが羨ましくて、つい視線が向かってしまう。
三段のケーキスタンドには季節のフルーツをふんだんに使ったプチケーキやスコーン、サンドイッチなどが上品に盛り付けられている。
ううっ……おいしそう。
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