エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
『で、その立派な男性とやらはどこのどなたですかね』
気だるげに問いかけながら、玉蔵の飲んでいたコーヒーを奪い取るとカップに口をつける。甘っ。どれだけ砂糖いれたんだよ。糖尿病になるぞ玉蔵。いや、もうなっているんだっけ。ま、どうでもいいやと甘ったるいコーヒーをもう一口飲んだとき、玉蔵が口を開いた。
『貴利くんだ。千菜もよく知っているだろ』
その瞬間、口からコーヒーが噴き出した。
貴利くん……。
その名前に、さーっと血の気が引いていくのがわかる。私は、手に持っていたコーヒーカップをそっとテーブルへと戻した。
『貴利くんって、郡司総合病院の……』
『そうだ。郡司総合病院の院長をやっているパパの大親友、史貴の息子の貴利くんだ』
郡司貴利……。
できれば二度とその名前を聞きたくなかった。しかも、あの男が私の結婚相手だなんて冗談でも笑えない。なんたる悲劇だ。
『史貴によると、貴利くんは今年の四月に出向先の北陸の病院から異動になって、こっちの病院に戻ってきたそうだ。今は港町総合病院に勤務しているらしい。ほら、千菜の職場の港町図書館のすぐそばだろ』
そんな……まさかあの男が私のすぐ近くにいるなんて。